三上博史の俳優人生は、時代の寵児としての華やかな顔と、異端の怪優としての顔が美しく交錯しています。彼のキャリアを語るうえで外せない代表作を振り返ります。
1. トレンディドラマの象徴期(1980年代後半〜1990年代初頭)
1987年の映画『私をスキーに連れてって』で原田知世の相手役を務め一躍スターダムに駆け上がると、『君の瞳をタイホする!』(1988年)、『君が嘘をついた』(1988年)、『世界で一番君が好き!』(1990年)と立て続けに月9ドラマなどの主演を担当。「トレンディドラマのエース」として日本中の女性を虜にしました。
2. 多重人格・狂気・シリアス期の覚醒(1990年代中盤)
甘いマスクの貴公子像に安住せず、1992年のドラマ『あなただけ見えない』では3つの人格を持つ多重人格者(青田光太郎・明美・マモル)という極限の難役を演じ分け、視聴者を震撼させました。さらに野島伸司脚本の『この世の果て』(1994年)や『リップスティック』(1999年)では、心に深い傷を抱える男の悲哀を熱演し、演技派としての地位を決定づけました。
3. 映画『スワロウテイル』(1996年)での金字塔
岩井俊二監督の金字塔的映画『スワロウテイル』におけるフェイ・フォン役は、三上博史のキャリア屈指の傑作として映画ファンの記憶に刻まれています。架空の円都(イェン・タウン)で生きる無国籍な男の哀愁、優しさ、そして壮絶な最期を英語・中国語・日本語が混ざり合う多言語劇の中で完璧に演じ切り、国内外から絶賛を浴びました。
4. 重厚な社会派ドラマと舞台への深化(2000年代以降)
WOWOWの本格ドラマ枠の黎明期を支えた『パンドラ』シリーズ(2008年〜)や『贖罪の奏鳴曲』(2015年)では、医療や司法の闇に挑む孤高の主人公を重厚に演じました。地上波の枠を超えた緻密な演技空間で、圧倒的な存在感を放ち続けています。