一見すると「毛足の長いゴールデン」と「ツルッとした短毛のラブラドール」という単純な外見の差に見えますが、身体構造の細部にはそれぞれのルーツが色濃く刻まれています。
ラブラドールレトリバーの原産地はカナダのニューファンドランド島です。冷たい北大西洋の海で漁師が落とした網を回収したり、撃ち落とされた水鳥を回収(レトリーブ)したりする使役犬「セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ」が祖先とされています。そのため、水流を力強く漕ぎ進むための水かき付きの足先や、冷水から体温を守る極めて密生したダブルコート、そして泳ぐ際の舵(かじ)の役割を果たす太く力強いオッターテール(カワウソ尾)が最大の特徴です。マズルは太く筋肉質で、全体的にがっしりとしたストイックな骨格を誇ります。
対するゴールデンレトリバーは、19世紀半ばのイギリス・スコットランドで、ツィードマス卿という貴族の手によって水陸両用の回収猟犬として計画的に作出されました。険しいハイランド地方の藪(やぶ)や湿地帯を駆け抜けるため、しなやかな関節と優雅な飾り毛、そして幅広で優しい表情をたたえるスカル(頭骨)を備えています。尾は旗のように優雅に揺れるフェザーテールとなっており、ラブラドールのような円柱状の硬い尾とは明確に形状が異なります。
毛色の基準にも厳格な違いがあります。一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準によると、ゴールデンレトリバーは「ゴールドまたはクリームの濃淡」のみが認められており、レッドやマホガニーは許容されません。一方のラブラドールレトリバーは、単色(ソリッドカラー)であることが絶対条件で、「ブラック(黒)」「イエロー(黄)」「チョコ(レバー/褐色)」の3色が公認されています。街で見かける黒や茶色のレトリバーは、外見がどれほど似ていてもラブラドール(またはその混血)であり、ゴールデンにブラックは遺伝上存在しません。