普段はコナンの麻酔銃によって眠らされ、へっぽこ探偵としてコミカルに描かれる小五郎ですが、彼の毛利小五郎の経歴(元刑事)を深掘りすると、38歳にして凄まじいキャリアを築き上げてきた超一流の男であることが浮き彫りになります。
小五郎は米花大学を卒業後、警視庁に入庁。難関とされる刑事部捜査第一課強行犯捜査三係に配属され、目暮警部の右腕として数々の凶悪事件の捜査に従事しました。この時点で警察組織内のエリートコースに位置づけられていたことは間違いありません。特に拳銃の腕前は警察学校時代から抜きん出ており、「訓練では常に的のど真ん中を撃ち抜く天才」として語り継がれています。さらに、柔道においては大学時代から得意とする「一本背負い」を武器に、現役の巨漢選手をも一撃で宙に舞わせる圧倒的な近接格闘能力を誇ります。
では、なぜこれほど優秀な刑事が28歳前後で辞職し、町の一民間探偵に身をやつすことになったのでしょうか。ここに名探偵コナンにおける毛利小五郎の真相、劇場版『14番目の標的(ターゲット)』で明かされた伝説の事件が関係しています。
10年前、凶悪犯・村上丈に妻の妃英理を人質に取られた際、小五郎は「人質が動けない状態を作れば犯人の盾として機能しなくなる」という極限の判断を下し、あえて妻の太ももを拳銃で撃ち抜きました。結果として英理は軽傷で救出され犯人も逮捕されましたが、人質に発砲した責任を追及される形で警察を依願退職したとされています。さらに、足を負傷した英理が感謝の気持ちを込めて作った不味い手料理に対し、小五郎が照れ隠しと気遣いの下手さから「こんな不味いもん食えるか!」と暴言を吐いたことが決定打となり、英理が家を出て別居に至ったという人間味あふれる真相も明かされています。
38歳という若さで、命懸けの修羅場、愛する妻への苦渋の決断、警察組織の辞職、そして独立開業とシングルファーザーとしての奮闘――。小五郎の顔に刻まれた独特の渋みと風格は、ただ歳を重ねた老いではなく、密度の濃すぎる激動の半生が刻み込んだ「経験の年輪」に他なりません。