市販されている山くらげには、味付け済みのパウチ惣菜と、乾物コーナーに並ぶ「乾燥山くらげ」の2つの形態があります。コストパフォーマンスを極め、自分好みの味付けで仕上げるなら乾燥山くらげの活用が圧倒的におすすめですが、現場の料理人や自炊愛好家が最も失敗しやすいのが「戻し工程」です。
急いで調理しようとして熱湯でグラグラ煮込んでしまうと、細胞膜が過度に破壊され、命である「コリコリ感」が完全に失われてクタクタの筋っぽい物体に成り下がってしまいます。山くらげ特有の黄金の食感を引き出すための、科学的に正しい戻し手順は以下の通りです。
【乾燥山くらげの戻し方と下処理ステップ】
- 水洗い:乾燥山くらげ(乾燥重量20〜30g程度で十分な小鉢4人前になります)をボウルに入れ、表面に付着した細かい埃や砂を流水でさっと洗い流します。
- 浸水(戻し時間):たっぷりの常温の水(夏場は冷水)に浸します。戻し時間の目安は2〜3時間です。ぬるま湯(約40度)を使う場合は1時間〜1時間半程度で戻りますが、極限の歯ごたえを追求するなら冷水でじっくり2時間以上吸水させるのがプロの定石です。水を含むと重量は約4〜5倍に膨らみます。
- 水気の絞りとカット:芯までしっかり柔らかくなり、鮮やかな緑色が蘇ったらザルに上げます。手でギュッと水分を絞り、食べやすい3〜4cmの長さに切り揃えます。
- 短時間の下茹で(アク抜き):鍋に湯を沸かし、塩をひとつまみ加えてカットした山くらげを投入します。茹で時間は「熱湯で30秒〜1分以内」に留めてください。これ以上加熱すると食感が抜けてしまいます。
- 冷水締め:茹で上がったら直ちに氷水または冷水に落とし、熱を取って緑色を定色させます。粗熱が取れたら再び水気をしっかりと絞り、これで下処理は完了です。
なお、家庭菜園に挑戦したい園芸ファンに向けて付言すると、山くらげの元となるステムレタスの栽培方法は決して難しくありません。春(3〜4月まき)または秋(8〜9月まき)に種をまき、本葉が数枚育ったところで日当たりの良い畝に定植します。茎が太さ3〜5cm、長さ30cm以上に育ったタイミングで根元から刈り取り、外側の硬い皮をピーラーや包丁で厚く削ぎ落として芯を取り出します。これを細切りにして数日間風通しの良い場所で天日干しすれば、完全無添加の自家製乾燥山くらげを収穫・調合することができます。