ネット上の情報空間には、ウィスク検査の機能や目的について重大な誤解が流通しています。その最たるものが、「ウィスク検査を受ければ、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如・多動症)であるかどうかの白黒診断が下される」という思い込みです。
臨床医学において、ウィスク検査単体で発達障害の確定診断が下されることは絶対にありません。診断はあくまで、精神科医や小児科医が国際的診断基準(DSM-5-TRなど)に基づき、乳幼児期からの生育歴、日常行動の観察、保護者からの問診、心理面接などを総合して行います。ウィスク検査で判明する指標得点は、あくまで診断を補補するための「認知的プロファイルの有力な傍証」に過ぎないという事実は強く認識しておく必要があります。
もう一つの過熱した誤解が、ウィスク検査によるギフテッド判定に関するものです。メディアで「IQ130以上のギフテッド児」といった文脈がセンセーショナルに取り上げられた結果、知能テストを子どもの英才性や天才性を証明するライセンスのように捉える親が一部に見られます。
しかし、発達支援の現場が直面しているのは、全検査IQが130を超える一方で、ワーキングメモリや処理速度が極端に低く、日常生活や学校集団に全く馴染めない「2E(Twice-Exceptional:二重に特別な)」と呼ばれる子どもたちの深刻な孤立です。秀でた才能(ギフテッド特性)と発達の遅れや不器用さ(障害特性)が同居している場合、本人の困り感は通常のケースよりもはるかに見えにくく、周囲から「生意気」「できるのにやらない」と苛烈なバッシングを受けやすくなります。検査は特権的なラベルを手に入れるためのツールではなく、二重の生きづらさを抱える子どもを保護するためのカルテとして活用されなければなりません。