イノダコーヒの歩みは、創業者・猪田七郎氏が戦前の1940(昭和15)年に京都の三条堺町で創業した海外物産の輸入・販売拠点に端を発します。戦後まもない1947年に喫茶店としての営業を本格化させ、谷崎潤一郎をはじめとする文豪や芸術家、学者たちが集うサロンとして発展しました。京都レトロ喫茶店カルチャーの礎を築いた存在であり、単なる「飲食店」の枠を超えた都市の社交場として機能してきた歴史があります。
その真骨頂を体感できるのが、京都市中京区に佇むイノダコーヒ 本店です。町家の風情を残す外観から一歩中へ足を踏み入れると、高い吹き抜けのホール、職人が磨き上げた木製カウンター、赤いモケット張りの椅子、そして四季折々の表情を見せる中庭が広がります。テラス席から望む坪庭の緑と、蝶ネクタイを締めた熟練スタッフによる丁寧な所作が織りなす空間は、訪れる者に日常から切り離された特別な時間を提供しています。