フィギュアスケートの男女種目を理解するうえで、最も基本的かつ決定的な要素は、それぞれの「競技の出自」にあります。似たような衣装でリンクに登場するため混同されがちですが、ペアとアイスダンスは目指す頂が根本から異なっています。
ペアスケーティングの起源は、男女シングル競技の延長線上にあります。男女が息を合わせて同じジャンプを跳び、男性が女性を高々と放り投げ、頭上高く掲げるといった「超絶技巧のアクロバットとダイナミズム」を氷上で体現するために発展してきました。一方、アイスダンスのルーツはヨーロッパの伝統的な「ボールルームダンス(社交ダンス)」です。氷の上でワルツやタンゴをいかに美しく、正確なステップとリズムで踊りこなすかという舞踊芸術が原点にあります。
日本国内において両者の違いが広く認識される契機となったのが、りくりゅうとかなだいの種目の違いです。「りくりゅう」が戦うペアは、時速25キロを超えるスピードの中で女性を放り投げる驚異的な身体能力と空中感覚が要求されます。対して「かなだい」が魅了したアイスダンスは、男女が胸や肩を触れ合わせるような至近距離で滑り続け、足元のエッジが氷を削るわずかな角度のズレすら許されない、極限の同調性と表現力が競われます。両者は「同じ氷の上で行われる、陸上で言えば器械体操と社交ダンスほど異なるスポーツ」と表現するのが最も正確な実態です。