大人の永久歯は、乳歯と異なり根が溶けて自然に生え変わる仕組みは一切存在しません。永久歯がグラグラ揺れている場合、その背後には必ず重度の歯周病(歯槽膿漏)、歯根の破折、または噛み合わせの異常(咬合性外傷)といった病理学的な原因が存在します。
「邪魔だから」「抜けそうだから」と大人の歯をご自身で抜く行為は極めて危険です。歯周病で骨が溶けている場合でも、歯根の先端には太い神経や血管が走行しており、自己抜歯によって止まらない動脈性出血や神経麻痺を引き起こす恐れがあります。歯科医院で行われる精密な抜歯手順を把握しておくことで、余計な恐怖心を取り除くことができます。
一般的な歯科医院における永久歯および親知らずの抜歯は、最新のデジタルレントゲンや歯科用CTによる診断を経て、以下のように段階的かつ無痛的に進められます。
- ステップ1:表面麻酔と浸潤麻酔
針を刺す痛みを消すためのゲル状麻酔を歯ぐきに塗り、極細針の電動麻酔器等を用いて人肌に温めた麻酔液を注入。施術中の痛みはほぼ完全にブロックされます。 - ステップ2:歯周靭帯の剥離
専用の器具(ヘベールやエレベーター)を歯と骨の隙間に差し込み、歯を支える靭帯を丁寧に緩めます。 - ステップ3:親知らず等の分割・抜歯
親知らずが横向きに埋まっている場合(水平埋伏智歯)は、歯肉を数ミリ切開し、歯の頭(歯冠)と根を医療用ドリルで安全に分割しながら骨への負担を最小限に抑えて取り出します。 - ステップ4:掻爬(そうは)と止血縫合
抜歯窩(抜いた後の穴)に残った炎症組織をきれいに掻き出し、必要に応じて縫合糸で傷口を塞ぎます。