金融引き締めが急速に進んだ局面において、市場参加者が最も警戒したのはFRBによる利上げの影響とそれに伴うオーバーキル(過度な引き締めによる景気失速)でした。政策金利が5.00〜5.50%水準まで引き上げられる過程で、シリコンバレーバンクの経営破綻をはじめとする地銀危機が突発的に発生するなど、金融システムの脆弱性が露呈する場面も見られました。
当時、ブルームバーグや各種調査機関が算出した米国景気後退(リセッション)の確率は一時60〜70%に達し、多くのエコノミストがハードランディングを警戒していました。過去のデータにおいて、急激な逆イールド(長短金利の逆転現象)が発生した後は高い確率で景気後退が訪れていたためです。株価が一時的に急落した主因は、金利上昇によるバリュエーション調整(PERの低下)に加え、将来の企業収益悪化への過度な警戒感でした。
しかし、実際の米経済は堅調な個人消費と歴史的な低失業率に支えられ、想定以上の強靭さを発揮しました。市場は「インフレのピークアウト」と「景気の底堅さ」という二つの相反するシグナルを織り込みながら、神経質な値動きを繰り返すこととなったのです。