ドラマ『ファーストクラス』のあらすじは、一見するとシンデレラストーリーの体裁を取りながら、その実態は陰惨な心理戦の連続でした。下町の小さな衣料品店で地味にボタンや布地を売っていた主人公・吉成ちなみが、ふとした偶然から憧れのファッション誌『FIRST CLOTHES』の編集部で見習いとして働く機会を得ます。しかし、その華麗なオフィスは、女性たちが自らの優位性を誇示し相手を蹴落とす「格付け(マウンティング)」の坩堝でした。
主演の沢尻エリカが演じた役どころは、単なる悲劇のヒロインにとどまりません。物語序盤では、職場内の序列最下層に位置づけられ、執拗な嫌がらせや理不尽な業務命令に耐える吉成ちなみでしたが、次第に編集部の欺瞞を見抜き、受け身の態度を脱ぎ捨てます。相手の罠を逆手に取り、清濁併せ呑む狡猾さを身につけてトップへと上り詰めていく「毒をもって毒を制す」ダークヒロインへの覚醒プロセスが、視聴者に強烈なカタルシスを与えました。
この重層的な人間関係を際立たせたのが、緻密に練られたキャスト相関図です。
- 吉成ちなみ(沢尻エリカ):下町出身の新人インターン。カースト最底辺から頭脳戦でトップ編集者へと成り上がる。
- 川島レミ絵(菜々緒):したたかな契約社員。「私以外、全員悪女」の象徴であり、強烈な毒舌モノローグでブレイク。
- 木村白雪(田畑智子):契約社員の古株。地味ながら陰湿な工作でちなみを陥れようと画策する。
- MIINA(佐々木希):圧倒的人気を誇るトップモデル。摂食障害や孤独を抱え、地位の失落に怯える。
- 八巻小夏(板谷由夏):副編集長。冷徹なリアリストとして編集部員をチェスの駒のように動かす。
- 大沢留美(長谷川初範)/松田静香(遊井亮子):経営陣・編集幹部として編集部のパワーバランスを左右。
本作の代名詞となったのが、画面に文字テロップとして表示される「心の声」であり、これが数々のマウンティング台詞としてSNSを席巻しました。菜々緒演じるレミ絵の「脳みそお花畑ちゃん」「あーあ、また無能な子が湧いてきた」「はい、終了〜」といった残酷かつリズミカルな内面描写は、視聴者が日常会話で思わず使いたくなるキャッチーさを持ち、流行語の座を獲得する要因となりました。