明治政府の神社整理によって多くの社が祭神の名を伏せざるを得ませんでしたが、現在でも瀬織津姫を堂々と主祭神として、あるいは秘めたる由緒として祀り続ける名社が日本各地に存在します。現地探訪に値する代表的な神社をご紹介します。
1. 佐久奈度神社(滋賀県大津市)
天智天皇8年(669年)の創祀と伝わり、大祓詞に登場する祓戸四神を総括して祀る「大祓の総本宮」とされる聖地。瀬田川の急流に面した境内は、瀬織津姫が罪穢れを流す情景そのものの空気を放っています。
2. 早池峰神社(岩手県花巻市・遠野市)
遠野物語の舞台であり、北東北の霊峰・早池峰山を神体山とする古社。祭神は瀬織津姫であり、山岳修験の霊力と豊かな水流信仰が分かち難く結びついた、東日本における瀬織津姫信仰の最大の拠点です。
3. 瀧川神社(静岡県三島市)
伊豆国一宮・三嶋大社の元宮とも伝えられる隠れ宮。清らかな瀧の落ちる深閑とした境内に瀬織津姫が単独で祀られており、知る人ぞ知る強烈な禊の場として崇敬されています。
4. 六甲比命大神社(兵庫県神戸市)
六甲山の急峻な山中に鎮座する巨石磐座群の聖地。巨大な奇岩そのものを御神体としており、弁財天信仰や瀬織津姫の古い祭祀形態を今に伝える奇跡的な空間です。
最新の研究史を振り返ると、大正から昭和期にかけて津田左右吉ら近代歴史学者によって神話の政治的捏造過程が批判的に検証され、戦後は菊池展明氏らの丹念なフィールドワークによって「消された神・瀬織津姫の全国分布」が科学的に証明されてきました。地方自治体の郷土史編纂や古文書のデジタルアーカイブ化が進んだ現在、各地の氏子たちが明治期に改変された祭神名を本来の瀬織津姫へと復祀する動きが広がりを見せています。