大手ペット用品メーカーやドッグスクールの指導現場では、飼い主の「思い込み」とおもちゃ選びのミスマッチが長年議論されてきました。
SNSや知恵袋などの飼育相談コミュニティを精査すると、「買いたての赤い知育トイに見向きもしない」「公園で赤いフリスビーを投げても途中で追うのをやめてしまう」「うちの子は集中力がないのでは」という悩みが定期的に投稿されています。しかし、現場のプロトレーナーが介入してトイの色を「鮮やかな青」に変えた瞬間、犬が見違えるような猛ダッシュを見せる事例が後を絶ちません。
都内のアジリティクラブに所属する指導員は、会員向けセミナーで次のように指摘しています。
「人間にとって赤は注意を引く『警告色』であり、店頭の棚でもひときわ魅力的に映ります。しかし、犬にとって緑の草むらに落ちた赤いボールは、同系色の暗い影に溶け込んで完全にカモフラージュされてしまいます。犬は視覚で追えなくなった瞬間、鼻を使ってクンクンと匂いを探す探索行動に切り替えます。飼い主からは『おもちゃに飽きて道草を食っている』ように見えますが、犬からすれば『突然視界から物体が消滅したため、嗅覚に頼らざるを得なくなった』というのが現場の実情です」
視覚的な手がかりを失うことは、犬にとって無駄なエネルギー消費やフラストレーションの原因となります。特にドッグランなどの広大なフィールドで遊ばせる際、ボールの色が背景と溶け合ってしまう状態は、愛犬の「レトリーブ(取って持ってくる)への意欲」を削ぐ大きな阻害要因となり得ます。