インターネット上の音域情報サイトや掲示板では、「『愛をこめて花束を』はサビでhiEを連発する超絶曲」という語られ方が散見されます。しかし、これは音楽理論上および実際の歌唱アナリーゼにおいて重大な誤解を含んでいます。
詳細なメロディラインを検証すると、メインサビの旋律における最高音はあくまでhiD#(D#5)です。話題に上る愛をこめて花束を 地声最高音hiEは、楽曲のラストパート(大サビの最後)で越智志帆がアドリブ的に放つロングシャウト・フェイクの1音に過ぎません。
つまり、曲の大半で対峙すべき敵は「hiE」という単一のピークではなく、メロディの中に執拗に配置されたhiB、hiC、hiC#、hiD#の中高音群なのです。ネット上の「hiEが出せるかどうか」という言説に惑わされ、無理に高音の出し方ばかりを練習していると、肝心のサビの旋律を美しくレガート(滑らか)に歌う技術が疎かになってしまいます。
さらに、多くの人が陥るもう一つの罠が愛をこめて花束を 原曲キーへの過度な執着です。「原曲の迫力をそのまま再現したい」という心理から、自身の声域特性を無視して原曲キーのまま喉を酷使した結果、声帯結節や慢性的な喉の炎症を引き起こすリスクすら存在します。越智志帆本人が持つ生来の声帯の厚みや共鳴空間の広さは稀有なものであり、同じキーで歌うこと自体を目的にするのは本末転倒と言わざるを得ません。