英仏海峡トンネル(通称ユーロトンネル)を語る上で、まず押さえるべきはその圧倒的な規模と独特な断面構造です。イギリス側のフォークストンとフランス側のカレー(コケル)を結ぶ本トンネルは、全長50.5kmに達します。総延長としては日本の青函トンネル(53.85km)に次ぐ世界第2位ですが、海底区間の長さにおいては37.9kmと世界最長の記録を保持しています。
この巨大構造物は、単なる1本の太い管ではありません。実際には、直径7.6メートルの「単線鉄道本線トンネル」2本が並行し、その中央に直径4.8メートルの「サービス・避難用トンネル」が走る合計3本の並行トンネル構造(総延長は約153km)で設計されています。本線トンネルとサービス・トンネルは375メートルおきに連絡横坑で結ばれており、気圧の調整や万が一の緊急脱出ルートとして機能しています。
建設にあたって最大の難関となったのが「水深と地層の選定」でした。ドーバー海峡の平均水深は約40〜50メートル。水圧に耐えつつ水漏れを防ぐため、技術陣は海底の地層を徹底的にボーリング調査しました。その結果選ばれたのが、海底面からさらに約40メートル下にある白亜紀後期の不透水性地層「チョーク・マル(Chalk Marl:チョーク泥灰岩層)」です。粘土質を含み水を通しにくいこの層を正確にトレースして掘削することで、激しい潮流の海底下でありながら、湧水を最小限に抑えた安全な掘進が実現しました。