静岡県沿岸部を揺るがし続けている最大のテーマが、南海トラフ巨大地震に伴う大津波です。浜松市は沿岸約17.5キロメートルにわたり、一条工務店グループの寄付等を契機として整備された「CSG防潮堤」(高さ13〜15メートル)を有しています。この圧倒的な構造物は市民に多大な安心感をもたらしましたが、ここにも心理的な落とし穴が存在します。
県の第4次地震被害想定および浜松市における南海トラフ被害想定の真相を精査すると、防潮堤は「発生頻度の高いレベル1津波(数十年〜百数十年に一度)」は完全にブロックする設計であるものの、「千年に一度のレベル2津波(最大波高15メートル超)」に対しては、越流することを前提とした減災構造であることが明記されています。越流が起きれば、沿岸部の低地や浜名湖・馬込川の河口から津波が逆流し、浸水域が発生します。
これに合わせて策定された浜松市ハザードマップの津波避難計画では、沿岸部住民に対して「防潮堤があるから逃げなくてよい」とは決して指導していません。強い揺れを感じたら直ちに津波避難タワーや指定ビルなどの高所へ退避することが絶対原則です。
さらに見過ごされがちなのが、浜松市ハザードマップが示す液状化危険度の深刻さです。中央区南部や天竜川河口付近、かつての水田・湿地を造成した埋立エリアは、極めて高い液状化発生確率が予測されています。大地震の揺れと同時にマンホールが浮き上がり、道路が泥水で寸断されれば、津波避難ビルへ向かう車や徒歩の避難速度は著しく低下します。「揺れが収まってから歩けば間に合う」という皮算用は、地盤の破壊によって打ち砕かれる危険性を含んでいます。