呼吸困難の現場で家族や周囲の人が最も直面する問題は、「救急車を呼ぶべきか、それとも明日まで様子を見るべきか」という逡巡です。日本社会には「迷惑をかけたくない」「大げさにして周囲に恥ずかしい思いをしたくない」という心理的ブレーキが働きがちですが、呼吸状態の悪化において数時間の躊躇は致命的な結果を招きます。
医療従事者が即座に「レッドフラッグ(超緊急)」と判断する基準は極めて明快です。
即座に119番通報(救急車要請)を行うべき危険な徴候
- チアノーゼの出現:唇、耳たぶ、爪の付け根が紫色または土褐色に変色し、末梢に血が通っていない。
- 会話不能・意識変容:息切れのために単語を途切れ途切れにしか話せない、あるいは問いかけに対する返答が曖昧で朦朧としている。
- 胸痛や冷や汗の併発:激しい胸の圧迫感、絞扼感、多量の冷や汗を伴っている(急性心筋梗塞や肺塞栓症の兆候)。
- 横になれない状態:座っていないと息ができず、前かがみで必死に呼吸にしがみついている。
救急隊到着までのファーストエイド
チアノーゼや重い呼吸困難を確認した場合、直ちに救急要請を行った上で、以下の手順で到着を待ちます。まず、ネクタイ、ベルト、下着の締め付けを速やかに緩め、胸郭と腹部の圧迫を取り除きます。体勢は本人が最も呼吸しやすい姿勢(多くの場合は上半身を起こした座位)を保ちます。決して無理に水を飲ませたり、仰向けに固定したりしてはいけません。室内を換気して新鮮な空気を取り入れ、声をかけ続けて意識レベルの変化を注視します。