悪魔のZが幾度となくクラッシュを繰り返した事故の理由は、車そのもののメカニカルな欠陥ではありません。その元凶であり生みの親こそ、「地獄のチューナー」の異名を持つ孤高のエンジニア・北見淳です。
北見が施したセッティングは、「ドライバーの技量や恐怖心に合わせる」という一般的な常識を完全に否定したものでした。マシンが最も速く走れる限界領域だけを追求し、人間側が車に合わせることを要求する設計思想。キャブレターターボ特有の強烈なドッカンターボ特性と、ねじれるボディが相まって、時速250kmを超えた瞬間にマシンの挙動は人間の反射神経の限界を凌駕します。「車が自らの意思で走りたがっている」と形容される狂気を受け止め、恐怖の先にある領域へ踏み込めたのはアキオただ一人でした。