フィクションの世界で強い個性を放つ「オッドアイ」ですが、医学・生物学的には虹彩異色症(ヘテロクロミア・イリディス:Heterochromia iridis)と呼ばれる明確な状態です。ヒトにおける発現確率は約0.6%未満とされ、非常に珍しい形質です。
ヘテロクロミアは、その現れ方によって主に以下の3つのパターンに分類されます。
- 完全型(Complete Heterochromia):左右の瞳の色が完全に異なる状態(例:右目がブルー、左目がブラウン)。
- 部分型・扇形(Sectoral Heterochromia):1つの虹彩の中に、異なる色の領域が扇形や斑点状に混在する状態。
- 中心型(Central Heterochromia):瞳孔を取り囲む中心部と、外側のエッジ部分で全く異なる色彩の輪が形成される状態。
発症メカニズムは多岐にわたります。先天的な要因としては、胎児の発生段階でメラノサイト(色素細胞)が虹彩へ遊走する過程で生じる遺伝的モザイク現象や、ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome)、スツルゲ・ウェーバー症候群といった遺伝性疾患が挙げられます。一方、後天的な要因としては、乳幼児期の眼球外傷、慢性的な虹彩毛様体炎、緑内障治療薬(プロスタグランジン関連薬)の長期投与、あるいは交感神経麻痺を伴うホルネル症候群などが知られています。
ネット上では「オッドアイの人はすべて特殊な能力や病気を持っているのか」といった極端な言説が散見されますが、視力低下や合併症を伴わない「孤発性の先天的ヘテロクロミア」であれば、健康上の問題は一切なく、個性のひとつとして生涯を過ごすケースがほとんどです。