カニ缶パスタの調理において、SNSや料理相談サイトで最も多く寄せられる悩みが「仕上がりがシャバシャバして味が薄まる」という現象です。この失敗を引き起こす最大の要因は、カニ缶に含まれる水分(エキス)をそのままパスタやソースと合わせてしまうことにあります。
市販の紅ずわいがに缶詰などに含まれる水分は、カニの豊かなアミノ酸を含んでいる反面、水分量が非常に多く、そのままフライパンへ流し込むとソース全体の油分と水分のバランスが崩壊します。イタリア料理の基本である「乳化」が妨げられ、パスタの表面にソースが絡まない状態に陥るわけです。
名店の厨房で行われているプロの味付けでは、まずオリーブオイルとにんにくを弱火でじっくり熱し、香りを引き出した段階でカニの身と缶汁を分け、「缶汁だけを先にフライパンで半量以下まで煮詰める」という工程を踏みます。水分を飛ばしてグルタミン酸などの旨味成分をペースト状に凝縮させた後、パスタの茹で汁と油分を激しく撹拌して乳化させることで、驚くほど濃厚でとろりとした舌触りが実現します。