「なぜ大人のほうがこれほどまでに激痛に苦しむのか」という疑問に対し、感染症専門医らの臨床研究から主に3つの決定的な理由が明らかになっています。
第一の理由は、原因ウイルスの遺伝子型変異です。従来の手足口病は「コクサッキーウイルスA16型(CA16)」や「エンテロウイルス71型(EV71)」が主流でしたが、近年猛威を振るっているのはコクサッキーウイルスA6型(CA6)です。このCA6株は水疱が通常より巨大化し、手足以外の四肢や体幹にまで発疹が広がりやすく、後遺症としての爪甲脱落を引き起こす病原性が極めて高いことが実証されています。
第二に、成人特有の過剰な免疫応答(サイトカイン反応)が挙げられます。大人の免疫システムは成熟しているがゆえに、未知の型や強力なウイルスに対して過剰に攻撃を仕掛けます。その結果、激しい炎症反応が皮膚深層や口腔粘膜で惹起され、高熱と神経を刺激する激痛として現れるのです。
第三に、手足の角質層の厚みと末梢神経への圧迫です。大人の足底や手掌は小児に比べて皮膚の角質が硬く厚いため、水疱の内圧が皮膚表面へ逃げずに内部の痛覚神経をダイレクトに圧迫し、体重をかけるだけで拷問のような痛みを引き起こします。
【手足口病の潜伏期間と感染経路】
手足口病の潜伏期間は3〜5日(稀に2〜7日)です。大人の主な感染経路は、看病を通じた以下の3つに集約されます。
- 飛沫感染・接触感染:感染した子どものくしゃみ、咳、唾液の飛沫を吸い込む、または水疱液に直接触れることによる感染。
- 糞口感染(最大の盲点):オムツ交換やトイレの介助時、便の中に排出されたウイルスが手指を介して大人の口に入ることによる感染。症状が治まった後も、便中には2〜4週間以上ウイルスが排出され続けるため、治癒後も油断は禁物です。