日本の初夏を彩るアヤメ科の代表格である「あやめ」「花菖蒲」「杜若(かきつばた)」。これら3種類を野外や庭園で瞬時に見分けるための決定打は、外花被片(垂れ下がる大きな花びら)の付け根にある模様、葉の形状、そして好んで自生する土壌環境の3点に集約されます。
第一の識別ポイントである花びらの模様は、最も確実性の高い鑑賞基準です。あやめの花弁の網目模様は、文字通り黄色地に紫色の細かな編み目状の筋が刻まれており、3種の中で最も幾何学的な美しさを放ちます。これに対して、花菖蒲は花弁の中央に鮮やかな黄色いくさび状の斑紋がクッキリと浮かび上がるのが特徴です。一方、杜若の花びらの白い筋は、紫の地色の中に一本の白から淡い黄白色の直線が縦にすっと通っており、他の2種とは明確に一線を画します。
第二の基準となる生育環境にも明確な住み分けが見られます。あやめは水気を嫌い、水はけの良い乾いた草地や高台、山の斜面などの畑地を好みます。花菖蒲は湿潤な土壌から半湿地、開花期に水が張られた庭園などで育ちます。そして杜若は、池の浅瀬や沼地、湿原など、株元が完全に水中に浸かるような深い水辺に自生します。つまり「乾いた大地にあやめ、水辺の境に花菖蒲、水の中に杜若」という位置関係が基本となります。
第三の葉の形状による見分け方のポイントも現場では重宝します。花菖蒲の葉には、中央に1〜2本の太く隆起した主脈(葉脈の芯)がはっきりと通っており、指で触ると硬い筋を感じます。杜若の葉は幅が2〜3センチと広く、主脈の隆起がほとんどないため平滑で滑らかな質感を持ちます。あやめの葉は幅が1センチ前後と細く、主脈も目立たない繊細な立ち姿をしています。