定義如来西方寺は「一生に一度の願い」にとどまらず、古くから縁結びや子宝・安産祈願の名所としても全国に知られています。しかし、なぜ落人伝説の残る山寺が、生命の誕生や男女の良縁と結びついているのでしょうか。そこには、定義如来縁結び真相とも呼ぶべき独自の習俗が存在します。
境内の一角には、後鳥羽天皇の皇子らを弔ったとされる「天皇塚」があり、その傍らに植えられた2本のケヤキの巨木が根元でしっかりと結びついています。この「連理の欅(れんりのけやき)」は、いつしか良縁成就や夫婦円満の御神木として信仰されるようになりました。一本の幹のように寄り添う巨樹の生命力が、視覚的な説得力をもって人々の心に寄り添ってきたのです。
また、定義如来西方寺ご利益のもう一つの柱である子宝祈願には、非常にユニークな伝統があります。貞能堂で祈祷を受ける際、堂内に安置されている小さな「子育観音(お人形)」を一体借り受けて自宅に持ち帰り、無事に子どもを授かった暁には、新しいお人形をもう一体添えて二体にしてお返しするという「お借り人形」の風習です。この循環型の祈願システムは、世代を超えて子孫繁栄の喜びを共有する温かな共同体の知恵といえます。