スーパーの特売棚で、穀物酢が500mlあたり120〜180円前後で売られている一方、米酢は250〜350円前後、純米酢になれば500円を超えることも珍しくありません。この2倍から3倍に及ぶ価格差の決定的な理由は、原材料コストと製造にかかる「時間(タイムコスト)」にあります。
一般的な穀物酢は、アルコール発酵のプロセスを短縮するため、サトウキビなどを原料とする醸造用アルコールを添加し、深部発酵法(液中に空気を吹き込み、数日から1週間程度で急速に酢酸発酵させる工業的手法)を採用して大量生産されます。原料調達から製品化までのサイクルが極めて短く、タンクの回転率を最大化できるため、低価格での安定供給が実現しています。
一方で純米酢や高品質な米酢は、主原料である国産米の仕込みに多大な原料費を投じます。さらに、蔵に棲み着く菌の力で液面からゆっくりと数ヶ月かけて発酵させる「静置発酵法(静置醸造)」を取り入れ、その後の熟成にも半年から1年以上の歳月を費やすケースが主流です。寝かせている間の管理工数、揮発による歩留まりの低下、貯蔵設備の維持費がそのまま製品原価に上乗せされます。消費者が支払っている価格差は、そのまま「原料米の質」と「熟成に費やされた時間」の対価と言えます。