田村正和さんのキャリアを語る上で欠かせないのが、自らの制作管理と私生活防衛の拠点となった個人事務所「富士企画」だ。大手のプロダクションに依存せず、少数精鋭で独自のスタンスを貫いたこの事務所において、裏方として決定的な役割を果たしたのが妻の和枝さんだった。
テレビドラマ業界が過密なスケジュールと狂騒に包まれていた時代、彼女は経理やスケジュールの細やかな配慮を引き受け、田村さんが演じることだけに集中できる環境を完璧に整えた。メディアからの突撃取材や過剰なパパラッチに対して壁となり、生活感を漂わせない「大スター・田村正和」という虚像と実像のバランスを保ち続けたのは、まさに彼女の手腕によるものだった。