江戸の街角を熱狂の渦に巻き込んだ名作『当世三美人』は、歌麿の卓越したプロデュース能力を物語る象徴的な一作だ。難波屋おきた、高島おひさ、富本豊ひなという、当時江戸で圧倒的な人気を誇った実在の美女3人を一枚の画面に収めた構図は、現代で言えばトップスターが一堂に会する奇跡のコラボレーション写真そのものである。
歌麿は彼女たちの顔立ちの特徴を描き分けるだけに満足しなかった。絶妙な首の傾きや視線の交錯によって、画面の中に濃密な空間の空気を生み出したのだ。この作品が店頭に並ぶや否や、買い求める客が押し寄せたという。浮世絵が持つポップメディアとしての爆発力と、高度な芸術性が見事に結実した瞬間であった。