重箱といえば、一の重から三の重までギッシリと料理を並べ、すき間を埋めることに躍起になるイメージが強い。しかし、土井流の解釈はまったく異なる。
「重箱の角まですべて埋め尽くす必要はない」。空間の美、余白の美を愛でる日本古来の感性こそが、お重の魅力を引き立てる。例えば、自分や家族の大好物である黒豆と伊達巻だけを小さめのお重にゆったりと盛り付ける。それだけでも立派な正月の食卓が完成するのだ。
また、重箱にこだわらず、普段使っているお気に入りの大皿に数品を少しずつ盛り付ける「ワンプレートおせち」も、土井氏の提案をきっかけに若い世代を中心に広く定着した。形式という名の鎧を脱ぎ捨てることで、食卓には豊かな笑顔と会話が戻ってくる。