長年ブラックボックスだった厨房の内情は、近年のメディアカルチャーによって広く大衆に知られるところとなった。厨房の熱気とシェフという生き方の葛藤をリアルに描き出し、世界中で共感を呼んだのがジョン・ファヴロー監督・主演の映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』だ。
評論家の酷評やオーナーとの対立によって一流店を追われた主人公が、一台のフードトラックでキューバサンドイッチを売りながら料理への純粋な情熱と家族の絆を取り戻していく物語は、形式的なプレッシャーに縛られた現代の料理人たちに強いメッセージを投げかけた。
さらに、Netflixが配信する人気料理ドキュメンタリー『シェフのテーブル』は、調理のノウハウではなく、料理人の哲学、ルーツ、挫折、そして創造性の源泉にフォーカスを当てた。映像美とともに描かれるトップランナーたちの生き様は、シェフを単なる技術職からアーティストや思想家へと昇華させ、世界的な食のカルチャーシーンを根底から塗り替えている。