標高723メートルに位置する芦ノ湖の水上交通は、激動の再編期を経て新たな運航体制へと移行しています。かつて西武グループ傘下の伊豆箱根鉄道が手掛けていた遊覧船事業は、2026年春に富士急行へ事業譲渡され、現在は「富士急芦ノ湖遊覧船」として運航されています。これにより、富士急ハイランドや山中湖クルーズで培われたアミューズメントノウハウが注入され、船内アナウンスの多言語化やQRコードを活用したスマート乗船システムの導入が急速に進みました。
国土交通省による水上安全基準の厳格化を受け、2026年現在では両陣営ともに高精度気象レーダーと連動した運航管理システムを完全配備しています。濃霧や突風の発生率が高い芦ノ湖特有のマイクロクライメイト(局地気象)に対応し、GPSを活用したリアルタイムの位置情報共有や緊急着岸プロトコルが更新されました。現場の船舶関係者は「天候急変時の運休判断基準が数値化されたことで、安全性は格段に向上した」と証言します。
一方で、インバウンド需要の完全回復と維持管理費の高騰に伴い、運賃体系の改定も相次いでいます。キャッシュレス専用レーンの新設や繁忙期における特別ダイヤの編成など、現場では混雑緩和に向けたデジタルシフトが進むものの、観光客側が求める利便性と事業者側のオペレーションの間には依然として摩擦が生じています。