2015年の上陸発表時、国内の飲食・流通業界は大きな衝撃を受けました。外資系飲食チェーンの日本初進出といえば、銀座、原宿、表参道、六本木といった一等地に出店するのが常識だったからです。しかし、創業者ジェームス・フリーマン氏が選んだのは、江戸情緒が残る江東区の下町・清澄白河でした。
公式発表や当時の創業者の証言によると、決め手となったのは「オークランドの本拠地と酷似した都市構造」と「焙煎所を併設できるインフラ環境」でした。ブルーボトル発祥の地である米カリフォルニア州オークランドは、大都市サンフランシスコから橋を渡った対岸に位置し、水辺と工場・倉庫が広がる開放的なエリアです。清澄白河もまた、隅田川を挟んで都心と隣接し、高い建物が少なく広々とした空が広がるロケーションでした。
さらに重要なのが、スペシャルティコーヒーの品質哲学「SEED TO CUP(種からカップまで)」を体現するための物理的条件です。豆を焙煎してから48時間以内に提供するという当時の厳格な基準を守るため、店舗内に巨大な焙煎設備(ロースタリー)を設置できる天井の高い倉庫物件が必要不可欠でした。清澄白河に点在していた木材・印刷・製本倉庫の跡地は、まさに理想的なキャンバスだったのです。