では、制作者たちは本当にそのような不気味な意図を込めていたのでしょうか。当時の制作資料や音楽関係者の証言を辿ると、ネット上の陰謀論とは正反対の、極めて温かく真摯な創作哲学が浮かび上がってきます。
本作の作詞を手掛けたのは、数々の歌謡曲や特撮・アニメソングの名作を遺した山口あかり氏。そして作曲は、日本のコマーシャルソングおよび歌謡界の巨人である小林亜星氏、編曲はスタジオジブリ作品でおなじみの久石譲氏が担当しました。この当代随一のクリエイター陣が目指したのは、日本人が古来持っていた「自然界への優しい眼差し」の具現化です。
にんげんっていいな 歌詞の意味考察を深める上で見落としてはならないのが、番組『まんが日本昔ばなし』全体の構成バランスです。同番組で放送される昔話は、必ずしもハッピーエンドばかりではありませんでした。『三枚のおふだ』のような緊迫感あふれる怪異譚や、『姥捨て山』のような人間の業や貧困、死を描いた過酷な民話も容赦なく放映されていました。
土曜の夜、それらの重層的で時に恐ろしい物語を見届けた幼い視聴者たちは、少なからず情緒的な揺さぶりを受けます。その直後に流れるまんが日本昔ばなし エンディングとして、子どもたちを現実の安心できる家庭環境へと軟着陸させる「情緒のシェルター」が必要不可欠だったのです。
小林亜星氏特有の親しみやすいペンタトニック(五音音階)をベースにした跳ねるようなリズムと、山口氏の描く「動物たちから見た人間のあたたかさ」。そこには、人間を特別視して威張るのではなく、自然界の仲間たちから「人間って楽しそうでいいね」と無邪気に愛される存在であってほしいという、アニミズム的な祈りが込められていたと読み解くのが妥当です。