世代を超えて愛される「きれいなジャイアン」の初出は、小学館の『てんとう虫コミックス』第36巻(1986年刊)に収録されたエピソード「きこりの泉」です。学年誌『小学六年生』1984年11月号に掲載されたこの短編は、藤子・F・不二雄先生の卓越した構成力とシュールレアリスムが極限まで発揮された名作として知られています。
物語の発端は、のび太とジャイアンの日常的なトラブルでした。古くなったバットや使い古しのオモチャを、ドラえもんが取り出したひみつ道具「きこりの泉」に投げ入れたことから事態が動き出します。泉から現れる美しい女神に正直に答えると、投げ込んだものよりも遥かに上質で高級な品物が手に入るという、誰もが知る童話をモチーフにした道具です。
この道具の存在を聞きつけた剛田武(ジャイアン)は、強欲にも自宅から大量の古道具を運び出し、まとめて泉に投げ込もうと企みます。ところが、あまりの荷物の重さにバランスを崩し、ジャイアン自身が泉の底へと真っ逆さまに転落してしまうという事故が発生。その直後、水面から神々しい光とともに浮上してきたのが、後に数々の伝説を生むことになる「きれいなジャイアン」でした。