市民から「なぜ見えているのに自衛隊は撃ち落とさないのか」という疑問が多く投げかけられました。しかし、高高度偵察気球の仕組みを紐解くと、軍事技術的に極めて厄介な障壁が存在していたことがわかります。 気球が飛行していたのは、民間航空機が飛ぶ対流圏(高度10,000m前後)を遥かに超えた高度20,000m以上の成層圏です。航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15Jの実用上昇限度は約19,000m前後であり、気球と同じ高度まで上昇して水平飛行を保ちながら射撃を行うことは困難を極めます。超音速で急上昇しながら一瞬の隙を突いて機関砲を当てるか、上方に向けて空対空ミサイルを発射するしかありません。 さらに、気球の材質は薄い特殊フィルム(ポリエチレン等)で作られており、レーダー電波をほとんど反射しません。一般的な戦闘機や対空ミサイルのシーカーは金属製の航空機をロックオンするように設計されているため、レーダー反射断面積(RCS)が極めて小さい気球は捕捉が困難です。加えてジェットエンジンのような高温の排気熱を出さないため、赤外線誘導ミサイル(熱源追尾方式)をそのまま命中させるのも容易ではありませんでした。 気球は下部にソーラーパネルとバッテリーを備え、搭載したプロペラ推進器によって成層圏の偏西風に逆らって進路を制御したり、特定の空域に留まることが可能です。ハイテク電子機器をあえてローテクな気球というプラットフォームに乗せることで、現代の防空システムの盲点を完全に突いた設計になっていたのです。
中国気球の日本飛来なぜ?スパイ疑惑と自衛隊撃墜ルールの真相
•
•
1分で読める