練習中の小学生や保護者から最も多く寄せられる悩みが、「高いレやミの音を出そうとすると音が裏返ってピーと鳴る」「息ばかり漏れてかすれた音になる」という現象です。この原因は肺活量の問題ではなく、「サミングホールの隙間」と「息の圧力(スピード)」のミスマッチにあります。
高音域を発音する際、リコーダー裏面にある左手親指の穴(0番孔)をわずかに開ける「サミング」という技術を用います。初心者が陥りやすい典型的なミスは、親指全体を大きくずらして穴を半分以上開けてしまうことです。適正な隙間はわずか「1ミリから2ミリ程度(三日月状)」に過ぎません。親指の腹を滑らせるのではなく、第一関節を軽く曲げて爪の左端を穴に少し食い込ませるようにして、上部に針の穴ほどの隙間を作るのが正しい運指のフォームです。
さらに見落とされがちなのが、右手(下の手)の指の隙間です。リコーダーはどこか1箇所でも指孔の塞ぎ方に隙間があると、管内の空気圧が保てず、高音が確実に破綻します。特に右手の薬指や小指は無意識に浮きやすいため、指の腹の柔らかい部分で確実にホールの感触を捉えているか、鏡を見ながら確認することが劇的な改善につながります。
息の吹き方についても重大な誤解があります。高音を出そうと気負うあまり、力まかせに強く吹き込むと、音程が極端にシャープ(上ずり)して耳障りな金切り音に変わってしまいます。高音に必要なのは「強い息」ではなく、「細く、スピードの速い、温かい息」です。寒い日にかじかんだ手に「ハー」と吹きかけるような温かい息を、ストローの細い穴を通して遠くのロウソクを揺らすイメージで吹き込むことで、かすれのない澄んだ高音が生み出されます。