ちまたで「地震雲」と誤認されやすい代表的な雲には、共通する特徴があります。ネット上でよく取り沙汰される俗称と、それに対応する本物の気象学的名称および見分け方を整理してみましょう。
ネット上で特に恐れられるのが、地平線から一本の巨大な線が空を切り裂くように伸びる「帯状雲」や、空の境目が直線的にスパッと分かれる「断層雲」です。しかし、帯状雲のほとんどは高高度を飛ぶジェット旅客機が残した飛行機雲が、上層大気の高い湿度によって消えずに長時間残留し、横風で広がったものです。飛行機雲との違いを見分ける最大のポイントは、「時間経過による拡散」です。飛行機雲は数十分から数時間かけて風に流され、徐々に輪郭が崩れて薄い巻雲へと変化していきます。
また、空一面にさざ波のように広がる波状雲は「肋骨雲」などと呼ばれて恐れられますが、これは空気の層が上下に波打つことで規則的な縞模様ができる典型的な大気現象です。秋によく見られる「うろこ雲(巻積雲)」や「さば雲(高積雲)」もその代表例です。うろこ雲やさば雲の違いは雲が現れる高度にあり、うろこ雲は上空5,000〜13,000m付近の氷の粒で構成され、さば雲はそれより低い2,000〜7,000m付近の水滴で構成されています。どちらも前線や低気圧が近づいて大気が湿ってきたサインであり、地震ではなく「天気が下り坂に向かう前兆」に過ぎません。
さらに、一点から扇状に広がる「放射状雲」も、実際には平行に並んだ細長い雲が、遠近法(パースペクティブ)の効果によって手前の一点から広がっているように見えている視覚の錯覚であることが分かっています。