『カーネーション』が傑作と評される最大の要因は、緻密に張り巡らされた人間関係と、一切の無駄がない登場人物の配置にあります。大阪・岸和田の呉服商の家に生まれた小原糸子が、洋裁と出会い、家父長制の色濃い時代に自らの足で立ち上がっていく過程には、個性豊かで生々しい人間味あふれるキャラクターたちが深く関わっていました。
主人公・小原糸子の家族を中心に、岸和田の町衆、商売仲間、そして戦中・戦後に出会う人々が織りなす関係性は、当時の日本社会の縮図そのものです。以下の相関関係が物語の骨格を支えています。
【小原家(岸和田の生家・オハラ洋裁店)】
・小原糸子(尾野真千子/晩年:夏木マリ/幼少期:二宮星):本作の主人公。呉服屋の長女として生まれ、ミシンとの出会いから洋裁の道を切り拓く。
・小原善作(小林薫):糸子の父。「小原呉服店」の店主。頑固で短気、伝統に固執しながらも、内心では娘の才能と情熱を誰よりも認めていた複雑な父親像を体現。
・小原千代(麻生祐未):糸子の母。神戸の良家出身でおっとりとした性格。激しい気性の夫と娘の間を取り持ち、家族を包み込む。
・小原ハル(正司照枝):糸子の祖母(善作の母)。口うるさく小言を言いながらも、一家の精神的支柱としてユーモアと厳しさをもたらす。
・小原静子(柳生みゆ)/清子(大谷澪)/光子(吉田葵依):糸子の妹たち。それぞれの生き方を模索しながら姉を支える。
・小原勝(駿河太郎):糸子の夫。テーラー職人として婿養子に入り、糸子を職人として尊重し支え続けるが、戦争によって過酷な運命を辿る。
【小原三姉妹(実在のコシノ三姉妹がモデル)】
・長女・小原優子(新山千春/少女期:花田優里音/幼少期:野田琴乃):モデルはコシノヒロコ。しっかり者でプライドが高く、母の背中を追ってデザイナーの道へ進む。
・次女・小原直子(川崎亜沙美/少女期:心花/幼少期:二宮星=二役):モデルはコシノジュンコ。反抗的で型破りな才能を持ち、装苑賞を受賞して東京へ進出。
・三女・小原聡子(安田美沙子/少女期:村上凛/幼少期:杉本くるみ):モデルはコシノミチコ。要領がよく甘え上手に見えながら、後に単身ロンドンへ渡り世界的な成功を収める。
【岸和田の人々と運命の出会い】
・周防長太郎(綾野剛):長崎出身の心優しきテーラー職人。戦後、糸子の事業パートナーとなり、互いに深く惹かれ合う運命の男性。
・吉田奈津(栗山千明/幼少期:高野愛子):糸子の幼馴染で高級料亭「吉田屋」のお嬢様。プライドの高さゆえに没落後も糸子と複雑なライバル関係を続ける。
・安岡勘助(尾上寛之):糸子の幼馴染。心優しい青年だったが、出征による戦争トラウマ(PTSD)を抱え、戦後社会の影を象徴する存在となる。
・安岡玉枝(濱田マリ):勘助の母。糸子の良き理解者であり、近所の髪結い床を営む。
・安岡八重(田丸麻紀):勘助の兄の妻。美しく凛とした佇まいで一家を支える。