ネット上や一部の報道では「青酸の入手経路は裏組織」「長年警察は無能だった」といった過激な言説が散見されますが、実際の捜査記録を検証すると、事件の構造は異なります。
誤解1:青酸化合物は特殊な犯罪ルートで入手したのか?
青酸カリなどの劇物は厳重に管理されていますが、筧千佐子の場合は最初の夫と経営していた印刷会社の製版・メッキ工程で使われていた青酸の残余物、あるいはかつての出入り業者との人脈を通じて保管・入手していた可能性が高いと認定されています。特殊な闇組織の関与ではなく、過去の事業の遺物が凶器として悪用されたのが実態です。
誤解2:なぜ長期間にわたり発覚しなかったのか?
被害者の多くが70代〜80代の高齢者であり、高血圧や心臓疾患、末期がんなどの持病を抱えていました。そのため、突然死しても現場に不審な外傷がなければ「病死」「心不全」として警察による検視のみで処理され、司法解剖に回らなかったことが発覚の遅れにつながりました。
完全犯罪の連鎖に終止符を打ったのは、最後の被害者となった筧勇夫さんの死亡時でした。急死した状況に不審を抱いた京都府警の担当医が司法解剖を実施し、体内から青酸化合物を検出したことで、過去の不審死事案が一挙に再捜査へ動き出したのです。