三上博史の原点を語る上で欠かせないのが、劇作家・寺山修司との宿命的な出会いです。高校時代に寺山に見出され、1979年のフランス・日本合作映画『草迷宮』で主演デビュー。前衛演劇集団「天井桟敷」の空気を吸い込んだ若き日の経験が、彼の演技に他者とは決定的に異なる暗黒の深淵と文学性を刻み込みました。
しかし、1980年代後半、彼はそのアングラな出自から一転してポップカルチャーの頂点へと躍り出ます。1987年の大ヒット映画『私をスキーに連れてって』でスキーブームの旗手となると、続く1988年のフジテレビ系ドラマ『君の瞳をタイホする!』でトレンディドラマという一大ジャンルを確立。『愛しあってるかい!』(1989年)などの軽妙洒脱なラブコメディで時代の寵児となりました。
だが、彼の真骨頂は単なるアイドル的スターにとどまらなかった点にあります。1994年のドラマ『この世の果て』では薬物依存に堕ちていくピアニストを狂気と共に演じ、1996年の岩井俊二監督による金字塔的映画『スワロウテイル』では、架空の無国籍都市・円都(イェン・タウン)を生き抜く青年「ヒデオ」役を圧倒的な存在感で怪演。華やかな表舞台の光と、人間の業が渦巻く闇の両極を自在に行き来する唯一無二の俳優として、伝説の地位を不動のものにしました。