なぜ世論はここまで苛烈に二人を叩いたのか。その背景には、心理学で言う「認知的ギャップ(期待と裏切りの乖離)」が存在した。
ベッキーはデビュー以来、スキャンダル処女として知られ、共演者やスタッフへの礼儀作法、ファンへの手書きの手紙など、「真面目で誠実な優等生」のアイコンとして日本中から圧倒的な支持を集めていた。大手ポータルサイトのコメント欄や5ちゃんねる、Twitter(現X)では、「他の誰が不倫しても驚かないが、ベッキーだけは信じられない」という裏切りへの怒りが瞬く間に燎原の火のごとく燃え盛った。
その過熱ぶりは、半年後の2016年5月、TBS系『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』でベッキーがテレビ復帰を果たした際の手記・告白インタビューからも如実に窺える。番組内で中居正広と対峙したベッキーは、沈痛な面持ちで次のように吐露した。
「記者会見に嘘はありました。友人関係と言いながら、心の中では川谷さんのことが好きでした。奥様がいると分かっていたのに、自分の気持ちを優先してしまった。本当に申し訳ないことをしました」
公の場で見せた憔悴しきった表情と、絞り出すような謝罪。カメラの前で涙を流す彼女の姿は、徹底して作り上げられた「パブリックイメージ」に縛られ、破綻した倫理観を是正できなかった個人の限界を浮き彫りにしていた。家族社会学や心理療法の視点から見れば、他者の期待に応え続ける「過剰適応」に陥った人間が、私生活で極端な秘密関係に依存し、心理的バウンダリー(健全な境界線)を見失って暴走した典型例とも分析できる。