ディズニー映画としての印象が強い『ベイマックス』ですが、その原案がマーベル・コミックスの『Big Hero 6』であることは意外と知られていません。しかし、映画化に際してディズニーは驚くほど大胆な翻案を行っています。
原作コミックにおける主人公の名は「ヒロ・タカチホ(高千穂ヒロ)」。東京のお台場に拠点を置く13歳の少年で、自作のロボット「ベイマックス」を引き連れて日本政府直属のスーパーヒーローチームに参加するという、王道の少年漫画的設定でした。さらに原作のベイマックスは白くて丸い癒やし系フォルムではなく、緑色の人型戦闘ロボットや凶暴なドラゴン型マシンに変形する武闘派ロボットとして描かれています。
映画版では、監督のドン・ホールが日本を訪れた際にインスピレーションを受けた「鈴」のデザインや、医療用ケア・ロボットという斬新なコンセプトを導入。舞台も東京そのものではなく、サンフランシスコと東京の文化が絶妙に融合した「サンフランソウキョウ」へと再構築されました。原作の持つサイエンス・アクションの骨格を残しつつ、普遍的な「喪失とグリーフケア(哀悼のプロセス)」の物語へと昇華させた翻案力こそ、本作の真骨頂です。