多くの生活者が「昔はどこでも無料で紙幣にしてくれたのに」と不満を抱く背景には、銀行業界を取り巻くコスト構造の劇的な変化があります。金融機関が硬貨の取扱手数料を新設・値上げした最大の要因は、物理的な現金の維持管理コストです。
硬貨は紙幣に比べて体積と重量が圧倒的に大きく、各支店から日銀や現金センターへ輸送・保管するための警備費用や燃料費が高騰しています。さらに、硬貨計数機やATM内部のメカニカルな摩耗、異物混入による修理・メンテナンス費用は年間で莫大な金額に達します。
日本銀行による低金利環境の長期化で利ざやが縮小した民間銀行各社は、これまで実質的に無償提供していた「現金インフラの維持管理費用」を利用者へ応分負担してもらう方針へ舵を切りました。加えて、政府が推進するキャッシュレス決済比率の引き上げや、マネーロンダリング防止のための資金移動トラッキング強化も、物理硬貨の縮小を加速させる要因となっています。