坂本冬美の師匠であり、数々の昭和歌謡の金字塔を打ち立てた作曲家・猪俣公章。『あばれ太鼓』での鮮烈なデビュー以降、着実にスターダムを駆け上がっていた坂本に対し、猪俣が「彼女の真の歌唱力と表現力を極限まで引き出す」という強い覚悟で書き下ろしたのが『火の国の女』でした。
作詞を手がけたたかたかしによる情念あふれる詞を受け取った猪俣は、従来の演歌の枠組みを超えた劇的なメロディラインを構築しました。レコーディング現場では、低音の唸りから高音の伸びやかな絶唱まで、妥協を許さない徹底的な歌唱指導が繰り返されたと伝えられています。坂本自身も恩師の厳しい要求に全力で応え、喉を極限まで酷使しながら感情を極限まで研ぎ澄ませていきました。
「ただ綺麗に歌うのではなく、腹の底から湧き上がる炎を声に乗せろ」という猪俣の熱血指導によって吹き込まれた魂の響きこそが、この楽曲を唯一無二の傑作へと昇華させた原点です。