裏本の流通システムは、時代とともに巧妙な進化を遂げました。初期の裏本は、繁華街の路地裏に立つ客引き(ポン引き)や露店、特定の個人商店の合言葉による手渡し販売が主流でした。しかし、1980年代に入ると、郊外の幹線道路沿いや空き地に設置された「無人自動販売機」が新たな販路として急成長します。
自販機本のパイオニアとなった雑誌群は、表向きは合法的な範囲を装いつつも、アングラ色全開の怪しげな表紙写真と過激な特集記事でドライバーや地元の少年たちを引きつけました。夜間のロードサイドに怪しい光を放つボックス型自販機は、対面購入の恥ずかしさを排除した画期的なインフラとして機能し、流通量を爆発的に押し上げました。
業界の内部証言によると、自販機の補充は深夜2時から早朝にかけて行われ、卸業者と自販機オーナーの間で現金決済による強固なネットワークが築かれていました。売上の一部は巨額の利益となって闇組織や独立系のアングラ出版社の資金源となり、警察の目をかいくぐるためのダミー会社設立や印刷工場の分散化など、組織的な防衛策が講じられていたのが実態です。