生食では厄介者扱いされるカラタチですが、東洋医学の世界では2000年以上前から重用されてきたエリート生薬です。漢方の古典『傷寒論』にも記載があり、日本薬局方においても正規の医薬品原料として規格化されています。注目すべきは、収穫時期と成熟度合いによって名前とからたちの実の効能が明確に分かれている点です。
初夏(5〜6月頃)にピンポン玉より小さいうちに採取・乾燥させた未熟果は「枳実(きじつ)」と呼ばれます。気(エネルギー)の滞りを強力に打ち破る作用があり、胃腸の蠕動運動を活発にして膨満感や便秘、胃下垂を改善する処方(大承気湯や四逆散など)に配合されます。一方、秋(10〜11月頃)に黄色く熟した果実を半切して乾燥させたものは「枳殻(きこく)」と呼ばれ、枳実よりも作用が穏やかで、胸のつかえや消化不良を和らげる目的で処方されます。
近年の生化学分析によると、からたちの実にはフラボノイド配糖体である「ヘスペリジン(ビタミンP様物質)」や「ナリンギン」、交感神経を刺激して脂肪分解を助ける「シネフリン」が極めて豊富に含まれていることが判明しています。これらは現代のヘルスケアにおいても、血流改善や抗アレルギー、生活習慣病予防の観点から高く評価されています。