初代ワゴンRのデザインが今なお名作と称えられる最大の理由は、単なる外見の格好良さではなく、徹底的な機能優先主義から生まれた「必然のディテール」にあります。その代表例が、初期型(1993年〜1997年)に採用されていた右側1枚・左側2枚という「左右非対称1:2ドア」のパッケージです。
当時、軽自動車の主流はセダン型(アルトやミラ)であり、若者や男性ユーザーからは「狭い」「商用車っぽい」と敬遠される傾向がありました。開発主査の戸田勝成氏らは、全高1,640mmという当時の軽としては異例のトールボーイスタイルを考案。運転席側のボディ剛性を確保しつつコストと重量を抑え、後席の同乗者は安全な歩道側(左側)からスムーズに乗り降りさせるという極めて合理的な理由から、左右非対称ドアが採用されたのです。
チーフデザイナーの宮沢俊夫氏らは、当時の乗用車にありがちだった過度な丸みや過飾を完全に排除。垂直に近いテールゲート、厚みのあるCピラー、樹脂バンパーとのストイックなコントラストを貫きました。この「飾らないカッコよさ」こそが、奇しくもガンディーニが追求した「アノニマス(無名性)な工業製品としての美しさ」と見事に共鳴していたのです。