主人公であるモチャ(キャラクター)の魅力は、過度な擬人化や作為的な愛嬌を排した「徹底した猫らしさ」にある。呼んでも見向きもしないくせに、新聞を広げた瞬間にその真ん中に居座る。撫でてほしいと鳴いておきながら、三秒後には突然噛みついてくる。
にごたろ氏の観察眼は驚くほど鋭い。猫を飼った経験がある者なら誰もが膝を打つ「あるある」が、無駄のない描線と絶妙な間(ま)によって鮮やかに切り取られている。読者がモチャの奔放な振る舞いに惹かれるのは、そこに嘘偽りのない生命の鼓動と、人間と動物との対等で不器用な愛のやり取りが息づいているからに他ならない。