市原隼人のキャリアを振り返る上で、近年の代表作『おいしい給食』シリーズの存在を外すことはできない。給食をこよなく愛する教師・甘利田幸男役で見せた振り切った顔芸と狂気すら感じさせるコメディセンスは、従来の「熱血・硬派」という彼のイメージを鮮やかに裏切ってみせた。
しかし、それは単なる奇策ではない。コミカルな動作の裏には、ミリ単位で計算された間と、役に没入する狂気的なまでの情熱が存在する。喜劇の裏に潜む哀愁、悲劇の裏に滲む滑稽さ。相反する感情を同時に成立させる演技力は、近年の映画・ドラマ界でさらに鋭さを増している。2026年に公開・配信される最新作群においても、その振れ幅の広さは群を抜いており、作品ごとに全く異なる顔を見せつけている。