本作の配給網を巡る座組も極めて特異だった。ハリウッドの巨大資本を誇るワーナー・ブラザースと、日本映画界の雄である東宝株式会社。この二大巨頭がタッグを組んだグローバル展開は、業界内外から大きな注目を集めていた。だが、市場ごとの観客嗜好の差異が、編集方針の対立をさらに深刻化させる皮肉な結果を生む。
北米市場を意識したダイナミックなアクション性と、アジア圏で好まれる情緒的かつ緻密なサスペンスの積み上げ。二つの異なる市場要求の板挟みとなった製作現場では、どのテイクを採用すべきかを巡って協議が紛糾した。東宝株式会社側が重視した心理サスペンスの機微が、ワーナー・ブラザース側の求めるテンポ感によって削ぎ落とされていくプロセスは、国際共同製作が常に孕む構造的ジレンマを象徴している。