だが、歴史の糸をさらに手繰ると、もう一つの起源が浮かび上がる。ボクシングの劇的戴冠劇より2年前の1972年、日本は空前のボウリングブームに沸いていた。その熱狂の中で創刊された業界誌の名こそ『週刊ガッツボウル』だった。
ピンが弾け飛ぶストライクの瞬間、プレイヤーが見せる気迫に満ちた仕草を同誌は「ガッツポーズ」と命名し、読者へ推奨していたのだ。米国のトップボウラーたちが持ち込んだ感情表現を、日本のメディアがキャッチーな和製英語として再定義した瞬間だった。言葉が先に存在し、そこにガッツ石松の劇的なリアクションが重なったことで、記号は生命を宿した。当時のスポーツジャーナリズムが仕掛けた言葉の伝播力と、劇的な勝負の瞬間が共鳴して生まれたハイブリッドな産物、それがこのポーズの真の出自と言える。