黒川雅之の作品が時代を超越する秘密は、東洋的な哲理に根ざした「気」と「間」の捉え方にある。
西洋のデザインが「形を作り出す(Forming)」ことにあるとすれば、彼のデザインは「関係性を編み出す(Relating)」ことにある。物体そのものを主張させるのではなく、その物体が置かれた空間の空気感――すなわち「気」をどのように変化させるか。物と物、あるいは物と人間との間にある余白や沈黙、すなわち「間」をいかに豊かにデザインするか。
触れた瞬間にハッとさせられる手触りや、視界に入ったときの心の鎮まり。それらはすべて、緻密に計算された思想的フレームワークから生まれている。流行を追いかけるデザインが数年で消費し尽くされるのに対し、彼の生み出したプロダクトが数十年経っても新鮮さを失わない理由は、ここにある。