薬物療法に頼らず、睡眠に対する認知の歪みと行動パターンを修正する「不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)」は、現在、世界の精神医学界において不眠治療の第一選択肢として確立されている。
CBT-Iの根幹をなす原則の一つが「刺激コントロール療法」だ。ベッドを「眠る場所」ではなく「悩み、格闘する場所」として脳に条件付けさせてはならない。もしベッドに入ってから20分以上眠れず、思考のループが止まらない場合は、思い切って一度布団を出ることが鉄則とされる。
薄暗いリビングに移動し、ぬるめの白湯を飲むか、退屈な本をめくる。このとき、スマートフォンやPCの画面を見るのは厳禁だ。ブルーライトと情報刺激が覚醒を助長してしまう。「眠くなったらベッドに戻る」というルールを徹底することで、脳内に「ベッド=即座に眠る場所」という強力な連合記憶を再構築していく。
もう一つの強力な武器が「ブレインダンプ(思考の書き出し)」だ。就寝の1時間ほど前に、頭の中にある懸念事項や明日やるべきタスクを紙の上にすべて殴り書きする。脳のワーキングメモリから情報を外部ストレージへ退避させることで、深夜に「忘れてはならない」と脳が警戒態勢を維持する必要をなくすのだ。